非現実の国で ヘンリー・ダーガーの謎
2008年 04月 03日
もしヘンリー・ダーガーが、現代日本に生まれてたら、ラノベを書いてたに違いない……
というのを、どっかで読んだんだけど、どこだったかな。ラノベの書き方本だったような気がするけど。
だれかに読まれることでもなく、もちろん出版されることを目的としたわけでもなく、ただ自分のためだけに「非現実の国」の物語を書き続けた人。
生きるために、そしておそらくは限りなく自己の物語を投影した、ヴィヴィアン・ガールズの戦いの物語を、300枚の挿絵と15,000ページ以上のテキストで書き残した人。
その物語を、この映画で追体験する。80分そこらでは語りきれないだろうその物語のおそらくはほんの一部。
新聞から切り抜いた惨殺された少女の写真が見つからないので、それを探すために神に祈るが、なかなか写真が見つからない。そのとき、ヘンリー・ダーガーが書く物語の中では、正義のキリスト軍が大敗していた。そういうやり方で、神に復讐するヘンリー・ダーガー。ついには執筆を3ヶ月間やめることまで誓いをたてるが、それでも写真は見つからない。「非現実の国」では、自分の想い通りにできるが、現実はなにひとつ動かせない無力な存在……ということに気付かされたという流れは、なんだがぐっときた。
それでも、ヘンリーが夢見た「非現実の国」は、ヘンリーにとっては、現実以上に大切なものだったし、ヘンリーはそれに命をかけていた。ヘンリーと、いまここでキーボードの前に座っている自分と、どれだけの差があるっていうんだ。ラストのヘンリーの死とそれ以後のシーンは静かな無情と希望に満ちたものだった。
公式サイト 『非現実の国で ヘンリー・ダーガーの謎』
by bogdog
| 2008-04-03 00:33
| 映画