瀧波ユカリ氏(「江古田ちゃん」)オススメの「花びら日記」「奈々子の青春」(西谷祥子)
2008年 07月 14日
「臨死!!江古田ちゃん」の瀧波ユカリ氏が、ゲイ雑誌「badi」のインタビューで、自身のルーツの漫画のひとつとして揚げていた作品です。(って、インタビューしたの俺だが)
この作品が、雑誌で発表されたのは、68年〜69年。
24年組よりもうちょっと前。
とにかく文字量・台詞の多さに驚いた! 漫画というよりは、まるで小説みたい。
幼なじみのゴクロー君とか、憧れのアポロとか(このあたりのネーミングセンスが昔っぽい)、トーフの君とか、そんなに美人じゃない奈々子にみんな好意を抱くところなんて、ハーレムな感じが少女漫画っぽいんだけど、ただのハーレムものじゃなくて、奈々子の姉2人の恋、親友エクボの壮絶な恋愛など、恋することと、女性の自立や行く末なども、フォーカスしているのがよかった。
いまや時代が変わってしまったのか、高校生が真剣に悩んで世界と関わっていることを、「セカイ系」で戦うべき対象ぼかしてしまったり、「萌え」で黙殺しまっているけれど、(「よ◯ばと」とか。もっと子供はいろいろ考えてるだろう)
江古田ちゃんが書きたいものも、普段みんなが見過ごしているけれど、でもしっかりみんな持っている心の動きなんだろうか…と、江古田ちゃんのルーツに触れられてよかった。
心に残ったシーン。
「奈々子の青春」で、真面目で優等生だった仲良しグループの「オメガ」が、突然テレビに出て男女交際について真剣に語りだす(「真剣しゃべり場10代」みたいな討論番組)。偶然テレビを見ていた奈々子は、変わってしまったオメガにショックを受ける。そのとき、芸能人になるために学校をやめた「コケシ」から電話がかかってくる。
「勝手かもしれないけどさ 私がいくら変わっても あんたたちだけは変わらずにいてくれる その安心感があたしを力づけてくれたの あんたたちは私の分身だったのよ
(略)
あたしは変わってくまわりはみんな敵ばっかりの世界で一日一日は確実に変わっていくわ でも…でも…オメガや奈々子が昔のままでいてくれると思って…」
「ムリだわ…それはムリなのよ 一日一日は……だれにとっても新しい日なのよ…きのうああだったからって きょうもそうだとは…」
(そうなんだ 一日一日の積み重ねが次の日また次の日の私たちを作っていく ある日突然変化が起こっても それはその日1日からきたものではなく その日までの日数がつみ上げてきたものが突然表にでただけなんだ 次第に確実にひとりの人間がつくられていく時 それはもう他人のタッチすべき……いや しうる問題じゃないひとりひとり迎える一日は中身が違うはずだから)
「奈々子の青春(リニュ−アル復刻版)」西谷祥子 小学館 p161〜162より抜粋
大人になれば、あたりまえだと気がつくこと。そんなどうしようもないことに苦しみながら、ひとつひとつ痛みを乗り越えて大人になっていく。恋愛でも才能でもなくても、日常を生きる事がひとつのドラマであり、そのまま青春であって、きらきらと咲いている花みたいに尊いものなんだ、とほんと何気ない1pで気がつかされました。
抜き出してわかったけど、この長台詞、4コマに収まってるんだよね。すげえな……最近の漫画だったら、これだけで8Pくらい使いそうです。よしながふみだって台詞が長いと言われるけど、これに比べたら……
おまけ デビィ夫人が若かった!
by bogdog
| 2008-07-14 11:23
| この漫画がスゴい!